ジャンク品のCDプレイヤーを入手して、USB DACとして復活させる大人の遊び(?)をしています。
https://tikatetu.com/audio/cdp2dac/
今回は世界初(?)の、ARCAMのCDプレーヤーのUSB DAC化改造について記録しておきます。
モチベーション
dCSと共同開発した「Ring DAC」を搭載する、CDプレーヤーだからです。
dCSとは、DACやCDプレーヤーの開発で有名なハイエンドオーディオメーカーです。
最新のモデルだと300万以上はします。
dCSのDACの売りは、「Ring DAC」と呼ばれる独自のディスクリートDACです。
PCMデータをマルチビットのΔΣ信号に変換し、この信号の後段に配置されたフリッププロップをOn/OffさせることでDA変換をします。
似たようなことをしているメーカーでいうと、最近は
が有名です。
いま話題の「ディスクリートDAC」の基本形を作ったメーカーなんだ。
翻って、ARCAM FMJ CD23 はこの方式のDACを搭載した数少ないCDプレーヤーなのです!
従って、このジャンクをお安く手に入れてUSBDAC化すれば、RingDACの音をいつでも楽しめます。
改造イメージ
CDの再生に必要な機能を取っ払い、USBDACとしてシンプル化しました。
<Before>
<After>
手順
以下、やることと、試行錯誤した内容(この手順に至った理由)を記載しておきます。
手順だけを知りたければ、「やること」の部分だけ見て進めればOKです。
動作確認
- ピックアップの動きがおかしく、CDが再生されずにリジェクトしてしまう…
- 一部の箇所でコンデンサの液漏れも確認
ピックアップモジュールの取り外し
- ピックアップモジュールはすべて取り外します。
- USB – DDC基板やFPGAを置く場所として使います
- 念の為リキャップを推奨します。
- 当モデルはケミコンの容量抜けが持病(2000年代初頭なので…ネ)
- 実際に液漏れの形跡があったケミコンもいくつかありました。
ブロック図の解析
やること
- 回路図を入手
- electrotanya 等で入手できます。
- コネクタや、部品のリファレンス番号を把握しておきます。
- 各種IC間のインターフェース電圧は5Vでした。
- ざっくりとDAC基板のブロック図を頭に入れておきます。
(参考)音が出るまでのパス
- DAC基板上にMCK(CLK17M)が存在。CDからSK3コネクタを介してやってくるI2S信号(SER_CLK / SER_DIN / SER_CH) をリクロックし、HDCDデコーダ(PMD-100、U16)に送る。
- CDプレーヤーなので、I2S信号の fs は 44.1kHz が想定されている。
- HDCDデコーダ(PMD-100)に内蔵されたオーバーサンプリング機能により、8fs = 352.8 kHz・かつDOL、DOR に 独立で出力された信号が、出力される。
- (画像を張るべき)
- この出力は、FPGAでさらに変換される。おそらくマルチビットのΔΣ変換が行われている。
- これがRingDAC ICに入力され、アナログの音声出力を得る。
(参考)立てられる方針
以上の構成から、USB-DAC化は以下のいずれかの方針で行えばよさそう。
- HDCDデコーダの出力にff 44.1k の I2S信号(右詰めformat)で入れる
- fs = 44.1 kを前提にリクロック部の設計が行われていることから、これ以外のサンプリング周波数の入力ができないので、非常に使いにくい仕様になってしまうデメリットがある
- fs = ~384kの音声信号を、PMD-100の出力と同様の形式で入れる
- fsに依存しないため、この記事では後者の前提で記載した。
- 8倍オーバーサンプリング等の機能は、自分で実装する必要がある(できる)
- 趣味的としては自由度が高くて面白い。
USB DDCからの出力を、DACに入力
やること
- HDCDデコーダ(PMD-100、U16)を取り外します。
- 取り外した場所の、DOL(24ピン)、DOR(23ピン)、BCK(26ピン)、LRCK(25ピン)に、LR独立フォーマットでPCMデータを入力します。
- この時の「LR独立フォーマット」とは、現在一般的に用いられるI2Sフォーマットとは異なる形式であるため、変換が必要です(後述)。
- fs = 44k ~ 384(8fs)であれば問題ありませんでした。
- HDCDデコーダでのオーバーサンプリングがスキップされますので、基本的にはノンオーバーサンプリング(NOS)動作となります。(従って fs = 44.1 kHz だと階段状の出力となります)
- 本機はインターフェースが5Vなのでインターフェース電圧の変換をします。
(参考)試行錯誤の内容
- 当初はHDCDデコーダを取り外さずに動作させる予定でした。
- 回路図から、コネクタSK3 に fs = 44kHz, 16bit 右詰めフォーマットのPCMデータを入れることで、リクロック回路経由でHDCDデコーダーに対してMCKと同期し信号を入力。
- しかしHDCDデコーダー(PMD-100)から出力(DOL / DOR)が出てこない為、当ICが故障していると判断。
- HDCDデコーダを取り外し、PMD100の出力フォーマットでPCMデータを入力し音がでた。
- FPGA及びRing DACモジュールが壊れていないことが確認できた。
- PMD-100の出力フォーマットは、LR独立+24bit右詰め。
- これはPCM1704 とともに使われる デジタルフィルタ DF1704 の出力と同じ。
PCMフォーマットの変換(更新予定)
- FPGAを活用して、フォーマット変換とリクロックを行いました。
- 本機器のインターフェース電圧は5Vです。一方FPGAのインターフェース電圧は3.3Vまでであることも多いでしょうから、双方向レベルシフタがあるとよいでしょう。
- 接続の安定性向上のため、外部MCKからの生成回路も作成。
コメント
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