ロームのハイエンドD/Aコンバーター(DAC)IC「BD34301EKV」の後継、「BD34302EKV」を搭載する機材をまとめました。
暑がりワニあまり話題になってないですが、これから盛り上がることを期待して。
BD34301EKV との違い
データシートの情報をもとに、ざっくり以下の表にまとめてみました。
| パラメータ | BD34301EKV | BD34302EKV | 概要 |
| 全高調波歪+ノイズ (THD+N) | -115 dB (Typ) | -117 dB (Typ) | DWAアルゴリズムが2世代になったことで達成 |
| 対応サンプリング周波数 (PCM) | ~768 kHz | ~1536 kHz | 1536kHz対応はDATA入力ピンを2つ用いた(PIN16:DIN2)場合のみ |
| モノラルモード (DAC内部で複数chを束ねて出力するモード) | 標準モノラルモード | 標準モノラルモード HDモノラルモード | 「ビット(振幅)方向の分解能を向上させる技術」としている |
| DWAアルゴリズム | 1種類(DWA1) | 2種類 (DWA1 / DWA2) | この新アルゴによりTHD+N性能が向上 |
| ボンディングワイヤーの切り替え | (おそらく)同一素材? | 端子ごとに金、もしくは銅と、異なる素材を選択 | 音質的にカスタムしたらしい |
以下、新しい技術について説明していきます。
HDモノラルモード
ロームのHPに当モードについての記載があります。
イメージ画像は単純にビット数が増えたような形になっているのですが、詳細は不明です。
*4) HD(High Definition)モノラルモードローム独自のデジタル信号処理により、ビット(振幅)方向の分解能を向上させる技術。数値性能の向上や、楽器の質感が分かる滑らかな音に音質を向上させることが可能。
https://www.rohm.co.jp/news-detail?news-title=2024-10-31_news_music&defaultGroupId=false
以下は あくまで推察 ですが、「独自のデジタル信号処理により」とあることを踏まえると
- おそらく従来の「標準モノラルモード」はIC内部のLch、Rch用のDA変換ブロックに対して同じ信号を入力し、その出力を単に加算している(一般的なDACで行われるもの)。
- 「HDモノラルモード」は、Lch、Rch用のDA変換ブロックに対して入力する信号を前段のDSPによって事前に加工し、加算されたときに精度が出るようにしている。例えば左右chで1bit分大きさを変えることで、加算したときに0.5bit分の精度が出せるなど?
と思われます。
DWA2 ではなにが進化したの?
ローム社の製品紹介資料にはBD34301EKV と BD34302EKV で、AudioPrecisionによる測定結果の比較が示されていて、特に偶数次の高調波歪みが低減していることがわかります。何がこの進化を生んでいるのでしょうか。
DWA (Data Weighted Averaging)について
そもそもDWA自体はロームの独自技術ではなく一般的な技術名称で、ΔΣ方式のDA変換に使用する電流源(エレメント)の製造誤差(ミスマッチ)に起因する歪みを抑制するための「動的素子マッチング(DEM: Dynamic Element Matching)」という手法の一種です。



なおDEM自体は90年代からある技術だよ。この手の内容が好きな人ならTDA1541のHACKとして有名な「DEMリクロック」とか、思い出すんじゃないかな?
詳細は省きますが、DWAはD/A変換のために使用する電流源(エレメント)を切り替えながら使用することで、上記ミスマッチによるノイズを可聴帯域外に追いやる(ノイズシェーピングする)ものです。
DWA2 で行われていることの予想
DWA2ではDWAにどのようなアップデートがあったのでしょうか。
BD34302EKVのデータシートには、DWA2を使う際は高いオーバーサンプリングレートが必要であることが示されているのですが、
(Note) When using the DWA algorithm 2 in PCM mode, the over sampling rate of ΔΣ modulation (DsOsr (40h[1:0])) must be set to “x 32” or “x 64” (fs = 32 kHz to 384 kHz), “x 32” (fs = 768 kHz), or “x 16” (fs = 1536 kHz). Otherwise, operation cannot be guaranteed.
BD34302EKVのデータシートより引用
このことから、DWA2は こちらの群馬大学、東京都市大の論文(2018年) で開示されているような、2次(2nd-order)のDWA Algorithm 技術である可能性が高いと思われます。
というのも、この方法では一般的なDWAに対して低域(可聴域)ノイズを強力に抑圧できる反面、高域におけるノイズが増大するので、オーバーサンプリングレートが高くないと可聴帯域にこのノイズが干渉したり、安定性が損なわれるリスクがあるためです。
実際、上記論文の著者である群馬大学の小林春夫研究室から、ローム関係者と共著とみられるDAC/ADCの直線性向上やテスト手法に関する論文が発表されています。
据え置き
今のところ、Luxmanの「D-100 CENTENNIAL」しか搭載機器がありません。
引き続き、新規搭載機種があり次第レポートしていきます。









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