最近のiPhoneにはイヤホンジャックが搭載されていないため、iPhoneと有線イヤホンを接続するための変換ケーブルが多数販売されています。音質にこだわるためあえて有線イヤホンを使う方は、この変換ケーブルで音質が大きく変わることもご存じだと思います。
そこで参考情報として、こうした変換ケーブルに搭載されているDACチップをまとめてみました。
意外と情報がないので、自分メモ用としてまとめてみたよ。
はじめに(詳しい方は飛ばしてください)
このまとめを元に商品を選ぶための事前知識を、技術的な話を最小限にして解説します。
- 「DACチップ」が違うと何が違うの?
- 音質が変わります。「DACチップ」とはデジタル信号をアナログ信号に変換する部品なのですが、この精度がチップによって大きく異なり、性能が低いと細かい音が消えてしまったり、音に不要な癖が付いたりします。
- なぜ「DACチップ」という切り口でまとめたのか?
- この手の製品は一般的に以下のような構成です。
- iPhoneから、Lightning端子を通じてデジタル信号及び電力を得る
- DACチップでデジタル信号をアナログ信号へ変換
- アナログ信号を、イヤホンを駆動できる程度の大きさに増幅する。
- 従ってどの「DACチップ」が搭載されているかが、音質の目安になるわけです。
- この手の製品は一般的に以下のような構成です。
- しかし「音がよい」「性能の良い」とされるDACチップを使用する製品が、必ずしも高音質であるとは限らないことにも注意が必要です。なぜなら先に述べた「電力」や「アナログ信号の増幅」の品質もひっくるめて総合的な音質となるからです。
良い食材も、適切に調理しないとおいしくないよね、って話です。DACチップは音質に大きく寄与しますが、音質を判断する「目安」でしかありません。
従って最終的に製品を選ぶときは、当記事のようなDACチップ等の情報を元に大まかに候補を絞り込んだ上で、それ以外の部分(例えば S/N比が高い など)も確認し、可能なら試聴して検討するのが良いと思います。
製品とDACチップ一覧
選定基準
- (アダプタ使用も含め)Lightning接続ができ、iPhoneからの電力でバスパワー動作するもの
- 最近はケーブル着脱式で、OTG機能の付いたUSB-C <-> lightningケーブルを別途購入することでlightning接続できるモデルが多いようです。
- DACチップについて何かしらの記載があるもの(そのDACチップを使用していることが、製品の売りになっている)
一覧
メーカー | 商品名 | DACチップ | バランス出力 | 備考 |
ikko Audio | ITM02 | AK4377 | なし | |
Lotoo | PAW S2 (Lightningケーブルバンドル版) | AK4377 | あり(4.4mm) | |
Lotoo | PAW S1(Lightningケーブルバンドル版) | AK4377 | あり(4.4mm) | |
radius | AL-LCH81K | AK4430 | なし | |
SHANLING | UA3 | AK4493SEQ | あり(4.4mm) | OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
Fiio | KA2 Lightning | CS43131(x2) | あり(4.4mm) | 4.4mmバランス出力のみ |
LUXURY&PRECISION | W2-131 | CS43131(x2) | あり(4.4mm) | W2のアップデート版 |
Astell&Kern | AK HC2 | CS43198(x2) | なし | Lightningへの変換アダプタが付属 |
ikko Audio | ITM05 Lightning | CS43198(x2) | あり | |
LUXURY&PRECISION | W2 | CS43198(x2) | あり(4.4mm) | |
MOONDROP | MOONRIVER2 | CS43198(x2) | あり(4.4mm) | OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
DUNU | DTC 500 Lightning版 | ES9038Q2M | あり(4.4mm) | |
Fiio | KA3 | ES9038Q2M | あり(4.4mm) | OTG機能のついたケーブルを別途購入することでLightning接続可(LT-LT1など) |
SHANLING | UA2 | ES9038Q2M | あり(2.5mm) | OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
HIDIZS | S9PRO | ES9038Q2M | あり(2.5mm) | OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
SHANLING | UA5 | ES9038Q2M(x2) | あり(4.4mm) | バッテリーの充電量に応じて動作モードが切り替わる。OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
radius | RK-DA70L | ES9270C | なし | |
Audirect | ATOM3 Lightningモデル | ES9280 | なし | |
Audirect | ATOM MINI Lightningモデル | ES9280 | なし | |
HiByMusic | FC5 | ES9281 | あり(4.4mm) | 4.4mmバランス出力のみ、OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
Audirect | ATOM2 Lightningモデル | ES9281 | なし | |
Audirect | Beam2se-21 | ES9281 | なし | |
Audirect | Beam3PRO | ES9281 | なし | LTOC OTG Adapter等により変換することでLightning接続可 |
Fiio | KA1 Lightning | ES9281 | なし | |
Questyle | M12 | ES9281 | なし | OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
Questyle | M15 | ES9281 | あり(4.4mm) | OTG機能の付いたケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
ikko Audio | ITM01 Lightning | ES9298 | なし | |
Cayin | RU6 | ディスクリート(R2R) | あり(4.4mm) | CS-L2Cケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
Cayin | RU7 | ディスクリート(抵抗ラダー) | あり(4.4mm) | CS-L2Cケーブルを別途購入することでLightning接続可 |
iFi Audio | GO bar | 未公表(Cirrus Logic製) | あり(4.4mm) | |
TANCHJIM | STARGATE | 未公表(Cirrus Logic製) | なし | |
LUXURY&PRECISION | W2-ACG | 未公表(CS431XX 2基) | あり(4.4mm) |
用語解説
上の表に登場する用語を大雑把に解説します。
- 「DACチップ」の列で、最後に(x2)と記載のある製品は、DACチップを贅沢に2つ使っている “デュアルDAC” 仕様です。追加でコストはかかりますが、一般的には音質的には有利であるとされています。
- 「バランス出力」とは、アナログ信号を増幅する回路を(+、-の)2つ使う方式です。外部ノイズの影響を受けにくい等のメリットがありますが、イヤホン自体がこの方式に対応する特殊なプラグになっている必要があります。
ちなみに「ikko ITM05」購入したことがありますが、これは正直おすすめできません。。
デュアルDAC搭載、バランス出力もでき、ノイズも非常に少なく音は大満足なのですが、
装着すると電池の消耗が3倍、iPhoneの本体の充電に時間がかかる、壊れやすい(急に認識しなくなった)と三重苦でした…。
おわりに
私も元々USBDACを使っていましたが、iPhoneとゴムバンドで束ねたりするのがあまりにも面倒な上、持ちにくくなるのが嫌で、使わなくなってしまいました。
同じような悩みがある方には、当記事に記載した(高音質な)変換ケーブルはお勧めです。最近ではエントリーレベルのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)レベルの回路を搭載した製品もあるため、外で使用するなら音質的にも申し分ないレベルとなっています。
スマホの利便性 × 音質 を両立できる選択肢になるのではないでしょうか。
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